あけましておめでとうございます。佐藤寛です。
今年も日本イエメン友好協会をよろしくお願いいたします。
昨年のハドラマウトの洪水被害について、遅ればせながら所感を書き込ませて頂きます。
昨年10月に東部ハドラマウト地方を襲った洪水(鉄砲水)は、大きな人的、経済的被害をもたらしたようで、被災された方々には心からお見舞い申し上げます。
さて、昨年このニュースが新聞・テレビで報道された直後に協会内部でも「お見舞い金/義援金を送ってはどうか」という議論がありました。しかしながら、結果として協会としてお金を送ることはしませんでした。それは以下のような理由によるものです。
われわれ「日本イエメン友好協会」は、「対等な」市民間の相互理解と友好関係の維持発展を目的としており、「援助する/される」という片務的な関係を目指しているわけではありません。従って、一般論として「かわいそうなイエメンの人々」に対して物やお金の援助を行うことはしてきませんでした。我々は援助団体ではないからです。
また、以下は私の個人的な意見ですが、イエメン研究者としてまた開発社会学者として、私はイエメンに対する安易な援助には反対なのです。なぜなら「かわいそう」という思い込みに発する援助を行うことは、日本人一般の「貧しい中東の国」というステレオタイプを上書きすることにしかならず、イエメンの人々の置かれている状況、その文化、社会などに対する正確な理解をむしろ妨げるからです。そうした事例を私は職業がら数多くの途上国で見てきました。実際「途上国に対するステレオタイプを増幅し、途上国の人々に依存心を植え付ける」ような援助は枚挙にいとまがありません。そして、それは日本と途上国の関係の深化には決してつながらないのです。つまり、当協会の活動趣旨にも反する結果にしかなりません。このため、私は個人的にも愛着の深いイエメンに対してだけはせめて、そうした活動をしたくないと考えており、本協会がそうした活動をすることにも反対なのです。
とはいえ、今回は「緊急救援」なので、多少背景が違う、というご意見もあるでしょう。しかしながら、今回の洪水がこれまで数多くあった洪水と、基本的にどこが違うのかという問題もあります。確かに、イエメンの災害が日本でこれほど大々的に報道されたことはこれまでありませんでした。しかしながら、日本で報道されたから災害の規模が大きいとは限りません。実は、イエメンではハドラマウトに限らずこれまでもこうした「鉄砲水」は定期的に発生してきました。これは乾燥地のワジ(枯れ川=普段は水がないが大量の降雨が山岳地にあった時に地表にしみ込むことができなかった水が一気に流れる道筋)にはつきものの宿命なのです。つまり、これは決して初めての事態ではないのです。
もちろん「緊急事態」に当たって支援が必要な場合はあるでしょう。しかし、我々のような資金も人材もいない団体にとって、今回の洪水が物的、資金的支援をしなければならないような事態なのか、については慎重に判断するべきだと思われます。そうした判断のための情報収集を十分にせず、単にテレビで報道されたからという理由でやみくもに「それ、援助だ!緊急支援だ!」という対応は、長期的な観点から望ましくないのです。
つまり、今回我々のなけなしの会費(数万円しかありません)を使って援助しても、今後別の洪水があったとき、あるいは地震があったとき、あるいは飢饉があったとき、その都度同じように対応できるのか、ということです。気まぐれな援助ほど、被援助者を苦しめるものはないのです。
最後の理由として、緊急援助で提供された物資が、混乱している現地できちんと必要とされている人に届くのか、というより根本的な理由があります。我々のような弱小団体の少量の支援物資がどのようなルートで誰の手に渡るのかをモニターすることはほとんど不可能です。場合によっては、どこかの有力者の私腹を肥やすために使われてしまうかもしれません。今回は国連も、日本国政府もイエメン政府に対する緊急支援を行いました。そうであれば、公的なルートを通して効率的に配分されることを期待するべきでしょう。
というわけで、今回は友好協会としての支援は行わず、伊藤理事が在日イエメン大使に「お見舞い」を述べるにとどめました。この点、皆様のご理解をお願いすると同時に、皆様からのご意見を頂ければ幸いです。
佐藤寛【2009/1/8 日本イエメン友好協会理事】
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